― MAGラオス シエンクアン事務所マネージャー ポンマリン・ソート氏
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今回のプロジェクトは、とてもいいインパクトを与えたと考えています。5教室の学校は、例えば40人の生徒が1教室で勉強すると考えれば、勉強できる生徒の数は、とても大きいものです。
不発弾撤去に関しては、プレマ株式会社様から不発弾撤去のための資金をいただき、2008年末から2009年初めにかけて撤去活動を実施しました。
中学校建設予定地の撤去でしたので、それほど広大な土地ではなく、また幸運なことに不発弾に汚染されていませんでしたので、実質の撤去作業は、それほど時間はかかりませんでした。 ただ、撤去作業をしてみなければ、実際に不発弾に汚染されているかどうかは誰にも分からないのです。 不発弾は至る所に埋まっているため、金属探知機を地面に当ててみるまで、そこに不発弾があるかどうかは分かりません。そのため、中学校建設を始める前には、不発弾に汚染されていないことを確認しなければなりませんでした。
幸運なことに、今回は何も見つかることなく、不発弾撤去作業後の土地を現地政府、住民、そして教育省へ譲渡することができました。
不発弾の撤去作業をすることは非常に重要です。
ある人々は、撤去作業の行われていない土地を掘ってしまうことがあります。もちろん、今回のように不発弾はないかもしれません。しかしながら、安全の保証はどこにもなく、危険があるかどうか、確かなことは撤去作業をしてみないと分からないことなのです。
事実、これまでMAGラオスが撤去活動を展開してきた場所の90〜95%は、何らかの不発弾に汚染されていました。不発弾に汚染されていなかったのは、わずか数パーセントの土地だけなのです。
ラオス赤十字社では、今回のような学校建設の他にも、幹線道路からかなり離れた貧困地域で何らかの支援プロジェクトを実施することがありますが、その時はまず、私たちMAGラオスが不発弾撤去作業を行うことから始まります。
結果的に不発弾がなかったとしても、危険をはらんだまま活動を展開することはできません。作業が完了し、安全が確保されるまで、彼らは支援活動を始めることができないのです。
撤去後の土地では、トウモロコシやお米、野菜などを安全に栽培できるようになるので、撤去作業を行うことは農業発展のために大変有効です。また開発の支援、例えば学校建設のために撤去を行う場合も、学校には多くの子どもたちが集まって勉強することになりますから、子どもたちの安全性を確保する意味でも重要で、それは教育・社会の発展にも貢献することになります。
今回の中学校建設プロジェクトの地域選定においては、郡教育省やその他の機関がすでに調査を実施し、戦略を策定、優先地域をいくつか選定していました。
そのような中で、カンパニオン村と周辺の村々は、私たちMAGラオスが「早急な対策が必要」と捉えていた通り、優先順位が高く設定されていた地域でした。
現地教育省にコンタクトを取り、彼らのアドバイスをもらってプレマシャンティスクールの建設地を選定したのは、大変良い方法でした。
もう1つ良かったと言える点は、少数民族の「モン族」が多く住む地域だったということです。モン族の子どもたちの数はとても多く、ラオス政府もまたモン族の子どもたちを、学校に行けるようにしなければならないと認識しています。
プレマ株式会社の中川社長だけでなく、多くのスタッフの方が開校式に参加してくださったことは、私自身大変嬉しいことでしたし、現地政府もとても喜んでいました。
それほど大きなセレモニーではなかったかもしれませんが、それはそれは素晴らしいものでした。
村人たちは伝統的なモン族の音楽や踊りで歓迎し、中川社長からはスピーチもいただきました。ラオスで地位のある人々、シエンクアン県の副知事もセレモニーに参加し、日本から来てくださった皆様を心から歓迎していました。
もちろん企業というのはビジネスで利益をあげ、お金を儲けるものですが、プレマ株式会社様のように、利益の一部で貧困地域のサポートをするということは、他の企業の手本になると感じています。
こうした支援活動をすることにより、その企業のお客様もまた、この企業はとてもいい企業だと認識し、継続して商品を購入し、支援をしてくれるようになると思います。
さらに、お客様がこうした企業の活動をきっかけとして、自らも貧困地域へのサポートを継続して行ってくれるようになるであろうと思っています。
ラオスを訪れたことのある日本人の方はご存じだと思いますが、発展途上のラオスは「世界最貧国の1つ」ともされ、ラオス政府は貧困国から発展するように努力を続けています。日本政府、日本の皆様からもたくさんのご支援をいただいております。
ラオスの貧困層の人々がどのように仕事をし、どのように学校に通っているのか、さらには十分な食糧のない状況にある人々がいることを、皆様に想像していただければと思います。
もちろんそれは、日本の皆様だけでなく、世界中の人々に知ってほしいことでもあります。
貧しい環境に置かれた人たちに、いろいろな人から少しずつでもサポートができる状況があれば、本当にそれは良いことだと思います。ラオスには限りません。世界中のそうした困っている人々を、少しずつでも助け合う環境があれば、素晴らしいことです。
例えば企業が物を売り、その得た利益を支援にまわすのもいいことですが、途上国の伝統的な製品や農産物や製品の市場を開拓してもらい、買ってもらうようにしていただくことも、貧しい環境にいる人々をサポートすることにもなると思います。有機栽培の農産物もその一つです。
ラオスは、東南アジアにある小さな国で、80%は農民です。また、戦争による影響がまだ残っている国でもあります。
特に、先にも述べたように、不発弾が国土を大きく汚染しているために土地の開墾もままならず、多くのコミュニティが未だ貧しく、収入もわずかです。
ラオス政府や国際NGOもこうした状況を改善しようとしていますが、まだまだ時間はかかると思われます。
しかし、ビジネスや農業、鉱物資源、水力発電などの潜在的な可能性も大いに秘めている国でもあります。
不発弾がラオスから全て取り除かれるには、あとどれくらいかかるのか・・・答えることが本当に難しい問題です。
ある人は50年、また別の人は100年はかかる、もっとかかるという人もいます。 ラオスにある県のうち、17県が不発弾で汚染され、うち9県は汚染状況がひどいとされています。ラオス政府の不発弾問題を扱う機関NRAが、国土の何%、何ヘクタールが汚染され、どれだけの土地がこれまでに撤去を完了しているのかなど調査を実施して、今後の計画を立てていますが、現時点ではいつ全ての不発弾が撤去できるのか目処はついていません。
不発弾被害者も多く存在し、事故もたくさん起きています。
データの収集が十分でないため、正確な数は分かりませんが、毎年200人は被害にあっていると推定されています。数多くの犠牲者が出ていることは確かです。
1964年〜1973年までの間に、ラオスには200万トン以上の爆弾が落とされ、そのうち30%は不発弾になっているとされています。200万トンの30%・・・・、それは途方もない数字です。 不発弾撤去団体だけでなく、多くの住民たちによっても不発弾は撤去されています。
安全のことを考え、住民たちには決して撤去をしてほしくないのですが、貧しい人たちが換金のためのスクラップとして集めるケースがあります。
不発弾には信管がすでになく危険性のないものもありますが、いつ爆発するともわからない危険なものも含まれています。多くの人たちが不発弾を回収していますが、それは、生活に必要な収入を得るためなのです。なかには事故に遭い、亡くなる方もいます。
私は今MAGラオスに勤め始めて3年になりますが、私たちの撤去活動は確実に人々の生活にいい影響を与えていると感じています。
以前は木材を取引する会社に勤めていましたが、森林伐採を促進してしまっていた以前の仕事より、貧しいコミュニティの人々を助けるMAGは人道団体で、格段にいい仕事だと思っています。
「不発弾に汚染された貧困地域を助ける活動に、身をささげていきたい」 それが私の本望です。
ありがとうございました。 |